  

雅塚学院はどこにでもある普通な学園。
その学園に通う主人公・曽根崎 渉は、どこにでもいるような普通な学生。
すでに季節は夏を終えて、秋を迎えようとしている中で、一人の転校生がやってくる。
その転校生の名前は早雲寺 花蓮
超がつくほどの有名店を構えるトップ財閥の一人娘だった。
「ちょっとあなたたち! 少しは静かにしなさいよっ!」
怒声を荒げる一人の女によって教室は静まり、生徒たちの視線はその子に集まった。
「教師の声も聞かずに勝手なことをして、恥ずかしいとは思わないのっ!」
問いかける彼女の言葉に声を発する生徒はいない。というか、できるわけがない。
(も、もしかして、転校生っていうのは……彼女のことか?)
振り返り、学を見やるとピースサインで合図を送ってくる。ということは、あいつは誰が転校してくるかも分かっていたみたいだ。
まさか、転校してくる相手が早雲寺のものだとは……
「あ、えっと……彼女は、みんなも知ってると思うけど、早雲寺さんね……今日、急遽転校してきたの」
「いきなりでびっくりしたと思うけど、根はいい子なんだから」
そんなかなえの言葉を無視して、再び教室はざわつき始める。
「あなたたち、少しは先生の言葉に耳を傾けなさいよねっ!」
花蓮の一声で静まり返る。今ではどちらが教師なのか分からない。
「先生も先生です、少しはハッキリ言わないとっ!」
「そ、それは……わ、わかってるんだけど……」
早雲寺家は、超がつくほどの有名店を構えるトップ財閥。彼女はその一人娘。
そんな彼女がどうしてこの学園にやってきたのかが、一番疑問である。
しかし、一応は先生でもあるかなえ先生を説教するとは……さすがはセレブ。
「ちょっと聞いてるの! 曽根崎! 曽根崎 渉!」
「………………はあ?」
突然名前を呼ばれたことに間抜けな声が上がる。が、彼女は確かに俺を見つめてくる。
生徒たちも今度は俺に視線を向ける。……さすがに恥ずかしいな。
「あなたはなにボーーッとしてるのよっ!」
「……いや、そんなことを言われても──はあ?」
なんで俺、怒られてるんだ? しかもかなり怒りを買ってるみたいなんだが──
「……あなた、何も覚えてないの?」
「覚えている……? いや、何も」
なんのことを言っているのか? 分からないにしても、少なからず俺は彼女のことは知らない……と思う。
「本当に何も覚えていないの?」
「ああ、覚えてない」
「絶対?」
「絶対」
「嘘ね──ごまかしても無駄なんだから」
……なんなんだ? こいつ。
それから、普通な学園は、少しずつ普通ではなくなっていく……?

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